天鼓

20201015友人のお父様のご命日に、お二人ともに人間国宝でいらっしゃる、シテ方宝生流能楽師の辰巳満次郎さん、能楽囃子方大倉流小鼓方十六世宗家の大倉源次郎さんより貴重なお話、さらには舞と演奏を拝見拝聴する機会をいただきました。

小太鼓は、胴に桜の木が用いられ、馬の革が手縫いで縫われたうえに漆が塗ってありますが、大倉様がお持ちになった小太鼓には素晴らしい蒔絵がほどこされ、約400年前のものということでした。
追悼として選ばれた演目は「天鼓」のダイジェスト版で、まず辰巳様よりストーリーのご説明をいただきました。

天から太鼓が降ってくる夢を見て授かった男の子、天鼓。
彼が3歳のとき、本当に天から太鼓が降ってきて、その太鼓を演奏する音があまりに素晴らしいので、皇帝が太鼓を渡すように命じます。
しかし、天鼓はそれに応じなかったために、湖に沈められてしまいました。

その後、名人に演奏させてもよい音が出ないので、皇帝は天鼓の父親を呼んで演奏させました。
すると、父の思いが天鼓に伝わったのか、素晴らしい音が鳴り響いたのです。
最後に皇帝は自身のしたことを涙して悔い、その後、冥福を祈って立派な葬儀をすると、天鼓の霊が現れて「殺されたのは理不尽であるが、しかし弔ってくれてありがとう」と感謝を伝え、喜びながら舞い、太鼓を打っていると、夜が明けていく。
天鼓の怨念ではなく明るささえ感じるお話である。

このようなことを伺ってから、舞を拝見し、小鼓の音を拝聴しましたが、限られた時間であったのにもかかわらず、優美で静寂な空間が広がりました。

さらには、終始お二人とも自然で、驕らず、ユーモアを交えながらお話ししてくださる素敵なお人柄に、尊敬の念は深まるばかりでした。
辰巳様、大倉様、このような場をくださった友人、さらには当日ご一緒した方々に、こころより感謝いたします。

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