一番とは思わないことの大切さ

台風の影響がかなり広がっています。
被害に遭われた方々におかれましては、こころよりお悔やみ申しあげますとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。
また影響のある地域にお住いの方々、くれぐれも気をつけてお出かけください。

一中節は三味線音楽の一つで、語りの一中節浄瑠璃と楽器演奏の一中節三味線で構成されます。20190909ブログ写真2
元禄の頃に初代、都太夫一中により始まり、一時は途絶えますが、江戸中期から末期には江戸で流行しました。
一中節は三味線音楽の中でも特に精緻で優雅な音楽といわれています。

一中節12世宗家の都一中氏は古くからのお知り合いで、3年前の小笠原流礼法宗家本部新春交賀会にゲストとしてお招きし、典雅な演奏と語りを拝聴いたしました。
また過日は少人数でのお食事会にお誘いし、ご一緒いただくことがございました。

20190909ブログ写真一中氏は洋楽にも造詣が深く、お会いするたびにお話を伺っているだけでも勉強になるのですが、このたびも三味線の構造や語りの違いなど、様々なことを教えていただきました。
語りの際に母音を発音するのかどうかによって、全くといってよいほど音の響きと広がりが異なることを実際に聞かせてくださいました。
楽譜がない代わりに語りの台詞が記されたものを見ると、音がわかるということにも興味が深まりました。
何よりも感動したことは、次のお話です。

「後継者として指名されたとき、私よりも上手な人がいるのになぜ指名されたのかと先代に尋ねました。すると先代から、最も上手でないから指名した、といわれたのです」
当時、一中氏が上手でないことは考えられませんが、ご先代のおことばは実に感慨深いものがあります。
このようなことを私の分際で申すことは大変恐縮ですが、しっかりとした技術と謙虚なお人柄を兼ね備えていらっしゃる一中氏だからこそ、後継者となられたのではないかと思うばかりです。

宗家が一番でなくても周囲に優秀な人がいれば皆さんに助けてもらえばよい、とも語ってくださいました。
常に前きらめきでなく、慎みのおこころを持っていらっしゃる一中氏のおことば、何と素敵でしょう。

自分は一番の実力がある、と思ってしまった瞬間に成長する道を自らで途絶えさせてしまいます。
己に足りない部分に気づき、学ぶことへの積極性を永遠に忘れることなく過ごしてまいりたいと思います。
門下の皆様、これからもお支えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

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