風俗博物館

IMG_9865過日は以前から気になっていた、風俗博物館(京都府京都市下京区)に伺うことができました。
古代から近代にいたるまでの日本の風俗・衣裳が1/4の縮尺での具現化展示されていることより、平安時代の服飾の流れをわかりやすく理解できます。
本年2月4日から5月31日までは、かさね色目、婚礼支度、重陽の節供など、小笠原流礼法を学ぶ者にとっても学びの多い展示がされています。

IMG_9896裳着といって、平安時代の女子の成人式にあたる儀式(成人して初めて裳をつける)に関して、裳の腰を結ぶ「腰結」の役になる人は、男子の元服のさいの「加冠(元服のさいに冠をかぶせる役)」に相当する大切な役でした。
裳着の年齢について、一定はしていませんでしたが、12歳から14歳の頃に吉日を選んで行われたようです。

四季のかさね色目については、平安時代は現在よりも絹糸が細いため、薄い織物がかさなることによって透けて見える色合いは大変優美であったことも改めて感じました。
梅重ね、桜重ねなど、自然の草木花の色をグラデーションやコントラストで表現すること、本当に素敵です。

IMG_9903重陽の節供については、不老長寿を願って菊酒を飲み、その傍らには小さな赤い茱萸袋がかけられているところも可愛らしくて感激いたしました。

次の展示の時期はまだ未定のようですが、是非次回も伺いたいと思います。

新茶と抹茶

26522657_s茶といえば、4月から5月頃が旬と思っている方が多いのではないでしょうか。
煎茶はその通りなのですが、抹茶は異なります。
なぜなら煎茶と抹茶、もとの茶葉は同じでも製造工程が違うのです。

まず、抹茶を作るには摘む3週間から4週間程度前になると、4月のうちに被覆と呼ばれる、新芽に覆いをかけて直射日光を避けます。
これにより、旨味や香りを葉に閉じ込め、渋みが抑えられるのです。
摘んだ茶葉は、そのままにしておくと発酵してしまうためにすぐに蒸します。
蒸した茶葉は揉まずに乾燥させます。
これを荒茶と呼びます。
その後、茎や葉脈などを取り除くと仕上碾茶が完成します。
このような過程を経たものを粉末状にすると抹茶ができるわけです。

さて、茶道ではお茶の正月とも呼ばれる「口切の茶事」が陰暦10月(現在の11月)に行われます。
初夏八十八夜の頃に摘み取った茶の新芽を茶壺に入れて口を封じ、夏場は涼しい場所で保管します(こうすることで旨みが増す)。
口切とは茶壺の口封を開封する儀式ですが、茶壷から取り出された茶葉は茶臼で挽いて使い始めます。
夏を越して秋を迎える前に抹茶として販売されるものもあるため、全てではないのですが、こうしたことから、抹茶の旬は春ではなく11月頃の秋ともいえます。
このような季節に応じた儀式を知ることで、さらにお茶を楽しむきっかけが広がるのではないかとも思います。

スクリーンショット 2023-05-16 14.08.39ところで、幼い頃から抹茶を飲むことが好きなのですが、抹茶を用いたお菓子にも目がありません。
免疫力をアップし、老化防止やコレステロール低下の作用もあるお茶をこれからも積極的にいただきたいと思います。

小さな満足

26421802_s今年は昨日5月21日が二十四節気の小満の入りでしたので、現在は小満の期間です。
二十四節気を簡単にご説明すると、1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたものです。

小満には、草木が次第に茂って天地に満ち始める、あるいは秋に蒔いた麦などが太陽の光を浴びて穂がつき少々安堵する頃、という意味が込められています。
木々の緑が鮮やかな小満の時期、美しい花々も目にすることが多いのではないでしょうか。
草木や花の姿を見て、こころに「小」さな「満」足を得ることができる期間ともいえるでしょう。

自然の恵みに感謝しながら、今週も清々しく過ごしてまいりたいと思います。

人に式代のこと

IMG_0668こ(5)と(10)ば(8)の語呂合わせで、5月18日はことばの日。
そこで、先ほど読んでいた小笠原流礼法の古文書に記されている「式代」について、触れたいと思います。

「式代」ということば、お聞きになったことはありますか。
「式」とは、ある定まったやり方やかたちを意味します。
「体」とは、からだやかたちを意味します。
「式代」とも書きますが、代にはかわりになるもの、あるいはもとという意味もあります。
式代の意味は、頭を下げて挨拶すること、会釈です。

室町時代の小笠原流礼法の伝書にも「式代」が用いられています。
たとえば、

人に式代のこと さのみ繁きは返りて狼藉なり

という教えがあります。
相手に挨拶をするさいはむやみに何度もお辞儀をすることはかえって失礼な行為である、ということです。
改めて意識をしてみると、「うっかり何度もお辞儀をしている」ということに気づく方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ことばの日、から挨拶の話題に逸れてしまいましたが、是非今日から「さのみ繁きは返りて狼藉なり」をこころに留めてお辞儀をなさってみてください。

サクランボ

IMG_0656前回に続いて、旬の食べ物について触れたいと思います。
サクランボは、桜坊、桜桃とも書きます。
原産地は、現在のトルコ周辺といわれています。

日本でサクランボが栽培されるようになったのは明治時代で、その後は品種改良を重ねて現在のように甘み豊かなものができました。
写真のサクランボは、門下の方から頂戴した佐藤錦です。
佐藤錦は山形県東根市の佐藤栄助氏によって、関東にもおいしいサクランボを出荷することができないかという思いより、交配開始から10年かけて作られました。
佐藤氏の親友だった苗木商の岡田東作氏によって、1928年(昭和3年)に佐藤錦と命名されたそうです。

IMG_0645サクランボは、花が咲いて実ができる、対にもなることから縁起が良いものと考えられています。
可愛らしいサクランボは見ているだけで幸せな気持ちになりますが、日本のみならずリチャードジノリやヘレンドなど、海外でもサクランボの絵柄を用いた素敵な陶磁器が作られています 。

むくみ解消、美肌、免疫機能を高めるなど、様々な効果がサクランボにはあります。
旬の5月から7月の間に是非、召しあがってみてはいかがでしょう。

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